●SJ20(SJ10)のディスクブレーキ化
 SJ10やSJ20のドラムブレーキをフリーハブ付のディスクブレーキに換装する方法は、かなり昔からの定番手法でした。要はSJ30〜JA11までのCVジョイントから先と、SJ20(SJ10)標準のものと入れ替えるという作業です。最近はWEB上でも方法が公開され、さらに身近なものになりましたし、実際にディスク化されたSJ10は結構存在すると思われます。

 ドラムブレーキをディスクブレーキに変更する事で謳われるのは、「効きが良くなった」というような事ですが、それはある意味間違いです。本来ドラムブレーキは非常に強い拘束力を持ち、自己倍力作用があるのでブレーキブースターの類を必要とせずに強い制動力を得られる優れたシステムです。よってディスクブレーキに対してドラムブレーキが制動能力で劣るというのはちょっと恥ずかしいといえます。実際にはタッチや初期制動の差がそう感じさせているだけであって、よく整備されたドラムブレーキはきちんと作動します。

 しかしドラムブレーキの場合、シューのクリアランス管理や内部の清掃を怠ると忽ち本来の性能を落としてしまう為、健全でない状態のものが多いのも事実です。これら整備不良のドラムブレーキは、はっきり言って最悪です。そしてメンテナンス性、放熱や浸水に関しては確実にディスクブレーキに劣るといえます。

 総輪ドラムブレーキの車両においてディスクブレーキ化するメリットとしては
 @メンテナンス性の向上
 A耐浸水性
 B急勾配での後退時でも確実に制動できる
 Cブレーキリリースタッチの向上
 Dフリーハブ装着による走行抵抗の低減
 特にBとCはクロスカントリー・ビークルにおいては重要項目です。Bは総輪ドラム車に乗っている者にしか解りませんが、急勾配でのバックは恐怖です。2リーディングの特性上、後退時にはセルフサーボが働かないので制動力が落ちますから前進時を同じ感覚で居ると、最悪の場合転倒さえすることもあります。Cは微妙な感覚の問題ですが、クローリング状態で僅かに駆動をかけながら微速前進する際は微妙なブレーキのリリースが命です。好みにもよりますが、押し広げるのと挟むのでは感覚が異なります。


 そんなわけで、部品が揃ってから随分経ちますが(10年くらい・・)、そろそろやっておこうかと思い・・・・重い腰を上げました。


 
 まずはディスク仕様のドライブシャフトを分解します。通常はシャフトとCVジョイントはサークリップを外す事で分離できますが、ジムニーの場合は「非分解式」ということで分離できません。と、言う事はCVジョイントを分解する事もできません。
 そこでシャフトを根元で切断して分解に要する角度を確保出来るようにします。後は通常のCVジョイントの分解作業と同じ事です。部品取りのジョイントは☆の部分にクラックがありました。以前に分解整備を受けたようですが、グリースが不足していたのでそれが原因でしょう。プリロードを出さなければならないはずのハブナットがタガネでいじられている事から見ても、整備不良です。

 
 あとは分解の逆の要領でCVジョイント部を組み立て、SJ10(SJ10)のシャフトと合体させればディスク仕様のシャフトが完成します。SJ20(SJ10)シャフトは上手い位置を叩くとジョイントに傷一つつけずに分解できます。この辺りは「なるようにしかなりません」


 ナックル関係一式を清掃しました。油と泥で形が変わっています。部品を頂くのは街乗り実動車に限りますね(笑 私はこういうバッチィのは、先を曲げたパレットナイフで泥と油をこそぎ落としてから、灯油を少量つけた歯ブラシでゴシゴシ。最後に灯油を染み込ませたウェスで拭き上げて清掃しています。
 仕上げに必要な箇所をざっと脱脂しておしまい!こうすると洗浄液や洗油が無駄にならないし、ドブ漬け洗浄時に発生するドロドロの廃液を処理しなくて済みます。因みに背景に写っている塵取りに乗っているのはコイツが産み落とした泥&油です。

 
 キャリパーを清掃しました。中性洗剤で洗うだけなので簡単ですので、分解前にもやっておくと作業が楽です。本体はサンエスA-1で洗浄。何とかソコソコ綺麗になりました。これで組みやすいです。キャリパー自体はJB32のもので、ブリーザーの位置が違いますが性能は変わりません

 ディスクローターも錆びてザリザリでしたので、綺麗にしました。あまり綺麗ではないですが・・・・・使いはじめれば、パッドで研磨されるんですが錆粉が飛び散るし、ザリザリだとパッドも減るような気がして(貧乏性&錆ギライ それよりも、組んでいるとき気持ち悪いですからね!ローターは10mm残っているし、レコードにもなっていないのでこれを使います。錆取も激しくやると駄目ですが、この程度に留めるならOKです。

 
 同時にフリーハブをリフレッシュしておきます。こちらも、ひたすら分解洗浄の後に通常通り組み上げるだけです。この部品はハブとの気密をOリングで保つタイプと紙パッキンのタイプの2通りあったりします。今回は後者を使いました。

 
 後はマニュアルに準拠した手順と数値に従って組み立てるだけです。タイロッドエンドはナックル側に対応した物を使用しますが、車高が高い場合は別段加工の必要も無くトーイン調整できます。一応念のため調整しろを確保すべくアジャスターを加工しておきました。ホースはディスクブレーキ用のものを用意する必要がありますので、それに対応してEクリップで固定できるようにステーを少加工しました。シール類は過剰整備のせいか5年以上前のOH時に使用した新品が全く痛んでいないので再使用しています。
 
★インプレッション(オンロード)
 早速、組み上げて数時間で100kmほどテストに行ってきました。高速道路から一般道、ちょっとしたワインディングに渋滞と上手い具合にアタリもついて色々と試せました。

 全体的な印象としては、当然ですが街乗りではドラムの時と全然変わらない(笑 しかしながらその他の細かい面でディスク化はかなりイイ!です。微妙なコントロールがスパスパできますし、カックン感は皆無。コーナーでちょっと鼻を入れてからブレーキを少しだけ抜くとか、狙った位置にビッタリ止めるというはディスクの方が楽でした。

 山ではこのリリースのタッチとバックでも充分に制動できる点が最大の強みになります。 そしてもうひとつのメリットとしてはフリーハブが装着された事で余計な物が回らなくなったのも◎です。 メンテの楽さや面倒な調整からの開放も特筆ものです。

 ただし、自己倍力のあるドラムに対してNOアシストのディスクなので、きちんと現状のブレーキに慣れておく必要があります。全体的にはドラムと変わらない感覚で使えますが、急制動時(本当に本気の急制動のこと)では、ドラムのガッ!と止まるブレーキングに慣れてしまっているとちょっと怖いです。必要な制動力を得るのにどの程度の踏力が必要かは把握しておいた方が良いでしょう。現段階でブレーキが重いという印象は全くありませんし、このダイレクトな操作感は捨て難い。SJ30やSJ40ではNOサーボディスクですから、要は慣れの問題です。マスターバックを装着するとこれは薄れそうですし、装着に伴う加工も大変になると思います(公認取得に当たっては、歴代ジムニーのノンアシストディスクブレーキ車と上手く比較する必要がありそうです。でないと制動力を計算しなくてはなりません)。

 街乗りオンリーだと恩恵は調整を含めたメンテナンス性とフリーハブ装着による走行抵抗の低減が光りますが、無理にディスク化する必要も無いかな?という印象。

★インプレッション(オフロード)

 さてさて、こちらも早速、クロスカントリーフィールドで試してきました!これは一言で、「最高に良い!」です。特に下りではドラムとは比較にならないコントロール性です。ジワリジワリとブレーキをリリースしつつ駆動をかけて微速前進する際などは、ドラムの段階的なカックン性からコントロールが非常にシビアですが、ディスクの場合は微妙な踏み加減にのダイレクトに応えてくれます。ドラムと違って、ちょっとしたミスから不意につんのめってしまって危険な姿勢に陥るような事も激すると思われます。

 
 さらに、ヒルクライム失敗時におけるバックでのリカバリーも非常に楽になります。後退に関しては前述のように総輪ドラム車は恐怖ですが、これがかなり改善されます。そして水に対する圧倒的な強さも、ドラムと比べると雲泥の差です。色々と良くなったと感激していますが、まぁ現代的な車両では当たり前の事です。しかし旧式の車両にとってはこの僅かな改善は大きいと思います。

 街乗りオンリーはもとより、頻繁にクロスカントリーフィールドに出かけられる向きには絶対にお勧めといえます。今更・・・・ですが。

 とりあえずこのままですと違法改造車なので、構造変更用の書類を作成しておきます。

 公認取得については後述予定!